2009年8月アーカイブ

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夕風に秋の気配を感じるようになると、少年のようにゆく夏を惜しんでみたくなる。

終わりない夏、なんて使い古されたフレーズを弄ぶほど身も心も若くはないけれど、
振り返れば浮かぶ、いくつかのシーン。


とある日、知己の新居のしつらいを手伝って、そのあとの銭湯の爽やかさ。
またとある日、小さな古書店の窓から眺めた夕立ちといなびかり。

思えば今年の夏は雨が多かった。

伊勢湾の小さな浜辺の茶屋のじいさんとばあさん、台風に荒れる海。
水鳥のように沖に浮かぶサーファーたち。

朝焼けの海、その遥か沖を行き来する満載の貨物船。
F3の望遠レンズ越しに見る無垢の微笑。

海は変わらない、ずっと。

ローターコースターの頂きから見える一瞬の遠景、のち震えるような急降下。

旅のエッセイを読みながらうたた寝する、郷里の縁側。
障子越しに、かすかに甲子園。

森のプールの水の中の静寂。

深夜、飼い猫を探して近所を廻り、ふりかえれば月、満天の星。
庭に咲くセージの真紅。

阪神高速池田線を走るSAABの窓から見る山の陰、シェリル・クロウの歌。

日蝕の360度のパノラマの夕焼け。
真夜中のベルリンの寡黙な青空。

うつろう風の色。

そんな光景のひとつひとつが、短い夏の記憶として、身体の中を流れ去っていく。

ガーシュインのこんなブルースを思い出した。

Summertime,
And the livin' is easy
Fish are jumpin'
And the cotton is high

Oh, Your daddy's rich
And your mamma's good lookin'
So hush little baby
Don't you cry

One of these mornings
You're going to rise up singing
Then you'll spread your wings
And you'll take to the sky

Janis じゃなく、Ella で聴いてみたいな。


*


休日をはさむと変則日程で、リズムがうまくとれない。
時間があれば本買いにはいくが、なんとなく焦点が定まらない感じ。

車に乗ることが多かったので、CDをたくさん聴いた。
音楽を聴けば、音楽のことが気になって、音楽の本が集まってくる。

■ ジャニス ― ブルースに死す   デヴィッド・ドルトン   19731010 3刷

■ ボブ・ディラン  瞬間の轍  1960-1973   ポール・ウィリアムス   音楽之友社 19920310 第1刷

■ ブルースの歴史   ポール・オリバー   晶文社   19910215 9刷    4794951760

■ ROCK'N ROLL BABYLON  ゲーリー・ハーマン  白夜書房  19890210 初版第7刷    4893670921

ジャニス・ジョプリンは、ROCKそのもの。
" BABYLON " は、ロック界のドラッグやセックスにまつわるスキャンダルの集成。
時節柄「のりピー」的な一冊といってもいいかもしれない。
オリバーのブルース史は、白人が書いたものとしてはもっとも優れた研究書だろう。

■ Nine Stories    J.D.Salinger  Bantam Books  1971 15th printing

■ Point Counter Point  Aldous Huxley   Penguin Books  1967 6th

■ WALDEN ; or Life in the Woods    H.D.Thoreau YOHAN Publication 1972

洋書ペーパーバックの均一棚に気がついて、3冊ピックアップ。
どれもそんなに難しくなさそうだから、できれば読んでみたいと、そのときは思う。
文庫本より少し縦長のサイズが、本棚に並んだ姿は、なんとなくイイ感じ。

" Nine Stories " は、「バナナ・フィッシュ日和」が収められたサリンジャーの自選短編集。
シーモアの物語「グラスサーガ」はここから始まっている。

オルダス・ハクスリーは、シェリル・クロウの " Run Baby Run " という曲で、

She was born in November 1963
The day Aldous Huxley died
And her mama believed
That every man could be free
So her mama got high, high, high

と歌われているイギリスのLSD作家。
" Point Counter Point " は、「恋愛対位法」と訳されている。

" WALDEN " は、言わずと知れた「森の生活」。

3冊とも、ヒッピー系かな。

■ 現代の職人   石山修武   晶文社   19910810 3版

住宅に対する考え方がとてもラジカルな石川先生の職人取材、
これまたラジカルな編集長を擁する「室内」の連載から。
このひとの徹底した大量生産、大量消費への反骨は HIP的としかいいようがない。 

■ 一生競馬   河内洋   ミデアム出版  20030330 第1刷    4944001991

装幀も中身もごくあたりまえの騎手本だけれど、サインを見返しに見つけて、おもわずレジへ。
「牝馬の河内」(現調教師)は同い年なのだ。
この本を買ったら、彼の厩舎の馬が、大本命をまかして札幌記念を勝利した。
こういうときに馬券を買っていないのが口惜しい。

■ 女たちよ!男たちよ!子供たちよ!   伊丹十三   文藝春秋   19790801 第1刷

■ 東京島   桐野夏生  新潮社   20080525 初版

■ 打ちのめされるようなすごい本   米原万里   文藝春秋   20061130 第4刷

「読まず売れ」の買い直しが2冊と、「忘れダブり」が1冊。
どれも百均棚にいるような本ではないのだが。


*


" SPOT LIGHT " で新しい企画 「select from selected(仮)」 が進行中、乞うご期待。

 

最近追加した「美しき日本の残像」のブックリスト。

http://kotobanoie.com/

 

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 「1Q84」が古本で、並んでいた。
発売が5月末だったはずから、少し遅いかもしれない。

上下巻で2800円というプライスタグ、それぞれ1800円で売られている本だから、それほど安くはない。
もちろんまだ読んではいないけれど、漏れ聞くさまざまな断片からすると、とてもミリオンセラーになる
ようなわかり易い物語じゃないみたいだから、もう少ししたら、ブック・オフあたりに大量に放出され、
今年の暮れあたりには、間違いなく半額にはなっていそうな気がする。

200万部といえば、話題になっているからなんとなく買っちゃったという人がそうとういるはずで、
長編小説を読み慣れていない人が、ハルキ渾身の純文学大作を読めば、「なんかよくわからないなあ」
というのがだいたいの反応じゃないかと思うし、「村上春樹『1Q84』をどう読むか」とか「村上春樹の
『1Q84』を読み解く」なんていう本がでているのもぜんぜん不思議じゃない。

村上春樹を、「あの文体は、自分がいちばん好きな人が書く文体ですよね。」 (2009/03/09 読売新聞
松任谷由実との対談で)
と喝破した石田衣良が、この「1Q84」のことをこんな風に語っている。

でもね、村上作品の謎を解こうとしてもダメなのだ。それは『仮面ライダー』に登場する『ショッカー』に
世界征服をしてからなにをするのか質問するようなものだ。『星形の斑紋のある羊』も、『やみくろ』も、
『ねじまき鳥』も、本作の「リトル・ピープル』も、そこに一切意味はない。なにかのシンボルでさえない。
魅力的だけど決して意味づけを許さない空虚として、村上作品では、毎回純粋な謎が構造的に物語
を支えている。

比喩はひどいけど、ちょっと言えてる。

それにしてもこの本、どうしてこんなに売れたんだろう。
そんなわかりにくい「空虚」がかんたんに共感をよぶわけはないし、プロモーションやマーケティング
だけでは絶対にこんな数字を獲得することはできないはずだし。

そんなことを考えながら、TVを見ていたら、「ノルウェイの森」が、単行本と文庫本を合わせて1000万部を
越えた、とNHKのニュースが報じていた。

そういえば2週間ほど前、均一棚の定番、Amazon でいえば 1円売りの常連ともいえる(さっきチェック
したら単行本の上巻が32円、下巻が50円、文庫本にいたっては送料を含めたら定価より高かったから、
やはり少し沸騰しているのだ)その「ノルウェイの森」の初版が、けっこうな値段で売れたことを思い出した。

「1Q84」に歯が立たなかった人が、「ノルウェイの森」を読み直し、読みはじめているんだろうか。
あるいは2009→1984(架空の)の救済の物語から、1987→1968(架空の)の恋愛物語への回帰なのか。

彼自身が装幀を手がけたというこの「ノルウェイの森」の赤と緑のシンプルなジャケットは、とてもわかり易く、
それでいて本棚でのインパクトがあるし、文体も、独特の比喩がこの作品ではかなり抑制されていて、
とてもシンプルなものだから、きっとこちらのほうがベストセラーとして理には適っている。

映画が撮られるのだという。
パリのベトナム人「青いパパイヤの香り」のトラン・アン・ユンの脚本/監督、松山ケンイチ+菊池凛子で。
本が増刷されたのは、これがいちばん大きな理由かもしれない。
ただ、そうやって「ノルウェイの森」を読む人たちはけっして「螢」を読むことはないんだろうな、と思ったり。

ちなみに、ビートルズの「Norwegian Wood」は、単数形だから「森」ではなく「木」。
その歌では " She showed me her room, isn't it good, Norwegian Wood ? " という文脈でつかわれて
いるコトバだから、ノルウェイ産の内装材(たぶん松材)のことで、彼女の部屋のちょっとエキゾティックな
雰囲気を表している表現じゃないかと思います。イギリスの家は壁紙で装飾するのが一般的だからね。

Anyway,

もうひとつ跳ぶために、村上春樹は、もっと正面から「性」(若者のそれじゃなく)に立ち向かうべきだと思う。


Leap before you look !


*


盛夏の本買記 ― it's too hot to do anything.


新しく開拓した古書店Kで、ホッパーの画集「 EDWARD HOPPER : 1882 - 1967」を見つけた。
彼の作品全体に漂うあの滲んだ人工の光は、コカインのようなアッパー系ではなく、きっとクエイルード
(quaalude)のようなダウナー・ケミカルで視える世界じゃないかという気がする。

代表作の "Night Hawk" を始めとして、 "Western Motel" "Intermission" "Chair Car" "Hotel Lobby"
 "Automat" など、椅子に腰掛けた女の人の孤独感を描いた作品にとても魅力を感じる。
本物が観たい。

久しぶりに行ったブック・オフでは、一度買い逃して、ずっと探していたボトンの「旅する哲学」に巡りあう。
まさかブック・オフでこれが見つかるとは思わなかった。

この本のジャケットが、ホッパーの "Compartment C,Car 293" なのはきっと偶然じゃない。
ホッパーの画集を買ったことで、この本が姿を現したのだ。

買い直しは、「ヒッチコック 映画術 by トリュフォー」
これも古書店Kで、じつはこの前にいったときにこの本が棚の隅にあるのを知っていた。

この本はたぶん5冊目。「読む前売れ」が続いている一冊で、ヒッチコックのファンからバイブルと
称されるだけあって、掲載すればれば必ず売れてしまう、密かな人気者である。
読めるまで買う。

何必館の「Henri Cartier-Bresson展」の図録が、T書店にあったのもウレシかったな。

雑誌は「住む。」と「和楽」

□ Edward Hopper    Rolf G. Renner    TASCHEN    2000

□ 旅する哲学 THE ART OF TRAVEL   アラン・ド・ボトン   集英社  20040410 第1刷                                                        
□ 黄金分割 ピラミッドからル・コルビュジェまで   柳亮  美術出版社 19711230 8版

□ ライトの住宅    フランク・ロイド・ライト   彰国社   19701110 第1版第4刷

□ Henri Cartier-Bresson          梶川芳友編   何必館・京都現代美術館  19971111 初版

□ ライトの住宅    フランク・ロイド・ライト   彰国社   19701110 第1版第4刷

□ ブランドのデザイン   川島蓉子   弘文堂   20060915 初版2刷

□ ヒッチコック映画術   フランソワ・トリュフォー   晶文社   19871215 17刷

□ エプスタイン回想録   ブライアン・エプスタイン(片岡義男訳) 新書館  19721105 初版

□ 燃える家 THE BURNING HOUSE   アン・ビーティ  ブロンズ新社 19890325 初版第1刷

□ 旅の絵本   三島由紀夫   大日本雄弁会講談社   19580527 第2刷

□ 日本の庭園 SD選書23   田中正大   鹿島出版会   19740530 第7刷

□ マルセル・デュシャン   東野芳明   美術出版社   19811120 4版

□ 嫌いなものは嫌い   フラン・レボヴィッツ   晶文社   19811030 初版


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最近追加した「小説・詩・エッセイ・評論など」のブックリスト。

http://kotobanoie.com/