2010年1月アーカイブ
この前のエントリーで、「映画は映画館でしか見なくなった」と書いたが、実はそれはウソである。
というか、ちょっと言葉が足りなかった。
それはレンタルのDVD/VIDEOを見なくなったという意味で(2年間ほど毎日必ず一本見ることを
自分に課していた時期があったのです)、テレビ番組の映画は、けっこう見ている。
とくに深夜、ノーカット・字幕で放映される、NHK BS2 の衛星映画劇場は、新聞を必ずチェック
していて、面白そうなものがあれば、HDに録画する。
去年の5月に放映された、「彼女を見ればわかること(Things You Can Tell Just by Looking at Her)」
なんていう、ガルシア・マルケスの息子が撮ったオムニバスは、しみじみ良かった。
で、この前も一本そんな風に「 In Her Shoes 」という佳作を録画したのだが、次の日見てみると、
前に見たことがあったことに気づいた、それも同じBS2で。
あきれたことに、本だけじゃなく映画もダブってしまったのだ。
あんまり口惜しいので、ダブりのパターンを研究してみた。
まあ要は忘れているということなんだけど、ことはそれほど単純ではなく、ダブり買い、同じものを
買ってしまうということにはいろんなパターンがあったのだった。
■ ど忘れダブり
なんとなくつい重ねて買ってしまう本がある。
すでに持っていることが完全に頭の中からトんでしまっていて、家に帰っていい本を買ったと悦に
入って本棚を眺めると、同じ本がそこにすました顔をして並んでいるのを発見して愕然とするという、
まあダブりの中でも典型的なパターンだけれど、これがいちばんダメージが大きい。
とにかく自分のバカさ加減に腹が立ってくるのだ。
→ さらに、ああでもなくこうでもなく 橋本治 マドラ出版 20010210/第1刷
この本は、橋本治が広告批評に連載していたクロニクル「ああでもなくこうでもなく」が単行本化
されたもので、赤・白・青・黄・黒・オレンジの鮮やかなジャケットに包まれたこのシリーズのどの
巻を見ても、そのたびに買ってしまいそうになっていたことがある。
(何回かダブりを繰り返したあと、今はなんとか治まっている)
橋本治は常時観測している作家なので、古書店にまだ持っていない(と思っている)彼の本が
あると必ず手には取るのだが、棚から抜いたその時点でもう魔が差しているということなのだ。
魅入られてしまいそうな本が他にもまだいくつかある、下手をするとトリプる。
■ 思いこみダブり
これはちょっと欲がからんでいる。
買ったのははっきり覚えているが、売れてしまったと思いこんで、リピートのつもりでダブり買い
するというトホホなパターンである。
→ シュルレアリスムのために 瀧口修造 せりか書房 19741115/4版
どうしてこんなことが起こってしまうのか、よくわからない。
そんなに大量の本を売っているわけじゃないし、ひとりでやっていることだから、売れた本という
のはたいてい把握しているつもりなんだけれど、これはこないだ売れたはずだ、という幻覚に
とらわれてしまう本がある。
ちょっと考えてみたら、いくつか理由らしきものが浮かんできた。
1 似たようなタイトルの本と間違えている。
2 同じ作者の別の本と間違えている。
3 値を付けた時点で売れた気になってしまっている。
4 受注から発送までの作業を散漫にやっている。
5 売れた本リストの作成がいつも遅れる。
6 単純にバカ。
いっそリピート買いというのを潔くやめてしまおうとも思ったりするのだが、いい思いをした記憶
というのは、なかなか捨てきれるものではないわけで、そんな本が古書店にならんでいると、
つい欲がでて、レジに運んでしまうのだ。
実はホントに困るのはこれと逆のパターンで、あると思っていたら売れてしまっていたというケース。
本を受注して明日発送しますなんていうメールを返信したあと、その本がないことに気づいた時は、
首筋が寒くなり、青ざめる。
こういうのはシャレでは済まない。
■ やむなくダブり
これは、全集や叢書を揃えるときにたまにある。
たとえば全8巻の叢書がある。
そのうちの5巻は少しずつ揃えて本棚にすでにある。ある日いっそ揃えてしまいたいなあと、ふと
思って探し始めると、アマゾンのマーケットプレイスに安くでている。一瞬これはしめたと喜ぶが、
よく見るとそれはすでに持っている第2巻と持っていない第3巻、第4巻の抱き合わせで売られて
いて、価格も3冊と考えると買い得感は高いが、2冊と考えると微妙。一瞬、よく考えたほうが、
という声がきこえるが、気持ちはもうすでに揃える気満々になっているので、まあダブったヤツは
端本として売ってしまおう、なんてイージーに考えて、ついクリック。
そんなパターンだ。
→ 日本の工芸6 ガラス 勅使河原蒼風他 淡交社 19660810/初版
→ 日本の伝統8 民俗芸能 池田弥三郎・フランク・ホッフ 淡交新社 19680510/初版
わかってやっていることだから、失敗感がないのが救いだが、端本がそんなに簡単に売れるわけ
もなく、その巻だけがいつまでもダブっている中途半端な「揃い」を見ていると、あまり気分のいい
もんじゃなく、いっそ燃やしてしもたろか、などという過激な衝動をなかなか抑えることができない。
別にそんなにあわてて揃える理由なんてどこにもないはずなのに。
■ 知りつつダブり
捨てておけない、義侠のダブり買い。
好きな人たちの本が均一棚に入っていると、ちょっとかわいそうになって、買わずにいられない。
おまえは、そんなとこにいる奴じゃないよな、なんて。
小林信彦の諸著作がその代表。
植草甚一はこの人と同系列じゃないかと思うんだけれど、古本業界ではカルトな人気があって、
どんな本にもそれなりの値がついていて、それがまたちょっと口惜しかったりするのだ。
まんまと本屋の作戦にのせられてるなあ、という気がしないでもないが、仕方ない。
偏愛とはそういうものだ。
■ 安い!ダブり。
自分が買ったときよりとんでもなく安く売られている本を見つけたとき、それには抗えない。
→ THE BOB DYLAN SCRAPBOOK BOB DYLAN SIMON & SCHUSTER 20050913/初版
まず最初の本を買った時は、その価格はその本の価値に見合う、つまりリーズナブルだと思って
買っているわけだから、たとえば4000円で買った同じものが、1800円ででていたら、買わないと
しょうがないでしょ。
もちろん売る時のことを考えて、市場からその超安値の本を駆逐しておくという深謀(?)もある。
よく考えると、ただ単にその本の適正価格を知らないだけ、という気がしないでもない。
■ あせりダブり
全集や全著作を一冊ずつ集めていると、どの巻を持っていないのかがわからなくなることがある。
古本は一期一会だから、これを買い逃すともう会えないんじゃないかと思うと、居ても立っても
いられなくなり、ダブってるかもと思いながら買ったら、やっぱりそうだったというパターン。
混乱の極み、である。
もちろんそれが功を奏することがなくはないが、あきらかにダブることのほうが多い。
→ 金属人類学入門 赤瀬川原平 日本カメラ社 19981201/3刷
→ ひと夏の冒険 シリーズ・ザ・スポーツノンフィクション 3 ロジャー・カーン 東京書籍 19880805/第1刷
one coin / one note にやってきた清張ファンのおばあさんのように、リストアップして、買った
ものを消去していくということをすれば、この問題は起こらないのはわかっているけれど、(この
おばあさんは、そのリストにダブりがありましたが)、収集の対象がいくつもあるし、それを持ち
歩いて書店で広げるというのも、あまりゾッとしない。
どうもこれは憶える努力をするしかなさそうだ、あるいは店頭では買わないとか。
■ いいものダブり
それほどよくあるパターンではないけれど、ヴィジュアル系の本でたまに。
それがすごく気に入っている本で、自分が今持っているものよりいい状態のものを見つけ、
しかもそれが前に買った時より安かったりしたら、やはり買わずにはおれない。
→ 対極 桃山の美 倉沢行洋 淡交社 20000413/増補再版
ただ、キレイなものや新しいものがいいと限らないのが、古本の難しいところで、中にはヤレが
あっても、版や刷によって、キレイなほうより値打ちがあったりすることもあるから、ヤヤコシイ。
どちらにしても、ダブり買いはどれも、「これは安い」と思うことがその発端である。
だから、ひとことで言えば、どれもがつまらない欲望の産物なのだ。
同じ本が2冊あるわけだから、そのうちの一冊をなんとか売ってやろうとするのだが、そういう
邪心がある時は、必ずと言っていいほど思うようにいかない。
だからといって、いい本だと思って買っているんだから、投げ売りするのも気が進まない。
雪隠詰めのようなこの結末。
人から見ると、ただあきれるしかないような話かもしれないけれど、好きでやってることだけに、
ただただ困ったもんだとしかいいようがない。
イヤハヤ。
*
年明けの本買い。
いい本も何冊かあったけれど、全般には低調、きっと流通量が減っているんだろうな。
そういう時は、ネットでピンポイント買いなのだ。
■ On Reading Andre Kertesz PENGUIN BOOKS 19821028
ブダペスト生まれの写真家アンドレ・ケルテス(1894 - 1985 )
この写真集は、希代のライカ使いが撮った「読む」人たちのスナップ。
川辺で、芝生の上で、カフェで、書店の棚の前で、電車シートで、梯子の上で、窓際で、屋上で、
教会で、なにかを読んでいる人たちの姿が、まるで映画のワンシーンのように収められている。
この緻密に計算された構図のモノクロ写真を見ていると、本を読むということが、いかに平和で
穏やかなことかが、よくわかる。
このPENGUIN版は、わずか64ページの小冊子のようなぺらぺらの写真集だけど、本が好きな
人にとっては、珠玉のような一冊だ。
「読む」というのは美しい行為なんだ。
■ アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクション 大阪芸術大学 20060310/第1刷
再々入荷。
前にも書いたが、大阪芸術大学には世界に4セットしかないブレッソン自選の写真コレクションが
所蔵されていて、この本にはその411点すべてが掲載されているということだから、この本はある
意味究極のブレッソン本といいってもいいんじゃないかと思う。
ブレッソンの「決定的瞬間」の構成力のスゴさについては、アーネスト・サトウさんが、芸術新潮の
1996年3月号で見事に解説(実際は弟子であった森村泰昌の代演)していたが、彼の美意識は、
同時代の、マチスやコルビュジェやモンドリアンと通底している。キーワードは 「モダニズム」だ。
コトバノイエのベストセラーの一冊、あれば必ず買う、ダブっても。
■ たのしい写真 よいこのための写真教室 ホンマタカシ 平凡社 20090601/初版第1刷
写真が続く。
タイトルは軽いが(このポップ感がこの人の持ち味なんだろうけど)、写真論としては素晴らしい。
Photograph は「写真」じゃない。<真を写す>だけじゃない、というテーゼ。
そして、モダニズムの写真は、「決定的瞬間」から「ニューカラー」へと流れてきたという歴史認識。
どちらもこの人の卓見だ。
そしてやさしい言葉でそれを講義できるところが、在学中にライト・パブリシティに入社したという、
この気鋭のフォトグラファーの頭の良さを表している。
もし仮に真実と嘘があったとしたら、写真はそのどちらにもなり得るもの、あるいはそのふたつの
間を行ったり来たりするものです。ある時はファインアート、ある時は雑誌のグラビア、ある時は
広告、またある時はプリクラだったり、ファミレスのメニューだったり。実際写真はボクたちのまわりの
至るところに存在します。だからこそ今日的。それが写真のたのしさだとボクは思うのです。
この写真論が「アフォーダンス」の概念に触発された、というのはいかにも今日的だ。
■ 雑誌をデザインする人と現場とセンスの秘密 藤本やすし ピエ・ブックス 20061111/初版第1刷
デザインチームCAPのアートディレクターが、タイトルどおり、戦後の代表的なグラフィック・コンシャスな
雑誌とそのエディトリアル・デザイナーを取材したフルカラーの大型本。
暮しの手帖 / 花森安治
太陽 / 多川精一
PLAYBOY / 田名網敬一
NOW / 江島任
anan / 堀内誠一
宝島( Wonder Land ) / 平野甲賀
花椿 / 仲條正義
POPEYE / 新谷雅弘
MORE / 松永真
写楽 / 長友啓典
SWITCH / 坂川栄治
Esquire 日本版 / 木村裕治
03 TOKYO Calling / 駿東宏
CUT / 中島英樹
i - D JAPAN / タイクーングラフィックス
WIRED 日本版 / 佐藤直樹
ku:nel / 有山達也
BOX / ダイヤモンド社
季刊 銀花 / 文化出版局 (最近廃刊のアナウンスメントがあった)
この錚々たるデザイナーたちへのインタビューと、それぞれの雑誌の誌面の画像が、ふんだんに
掲載されていて、エディトリアル・デザインに携わる人への贈り物のような本じゃないかと思う。
one coin / one note のロゴをデザインしてくれたYくんに是非見てもらいたい。
□ 乾山 バーナード・リーチ 東京美術 19671020/初版
□ わび 水尾比呂志 淡交社 19711201/初版
□ セラミック・スタンダード 森正洋作品集 森正洋 プチグラパブリシング 20050521/初版第1刷
□ 絵のなかの散歩 洲之内徹 新潮社 19730625/初版
□ 自分たちよ! 伊丹十三 文藝春秋 19831001/第1刷
□ 注視者の日記 港千尋 みすず書房 19959525/初版
□ CALIFORNIA DESIGN Jo Lauria/Suzanne Baizerman Chronicle Books 2005
□ 色川武大/阿佐田哲也全集 3 色川武大 福武書店 19911216/初版
□ 卒業設計で考えたこと。そしていま 五十嵐太郎編 彰国社 20051120/第1版
□ 安吾追想 坂口三千代 冬樹社 19810217/初版第1刷
□ ナガオカケンメイの考え ナガオカケンメイ アスペクト 20061231/第1版第2刷
*
中津の one coin / one note は、1月31日(日)まで、残り日わずかです。
1月24日(日)もオープンしていますので、ぜひ足をお運びください。
*
年を跨いだこの2ヶ月間の感謝をこめて、最終日にささやかな Party を催そうと思っています。
■ one coin / one note 謝恩 クロージング・パーティー
→ 1月31日 日曜日 PM4:00頃より
→ 中津 one coin / one note (近藤英夫建築研究所内)
自由参加ですので、皆様お誘い合わせの上、ぜひお越しください。
年が明けてあっという間に10日が過ぎてしまった。
この調子なら、1年は1時間くらいで消え去ってしまいそうだ。
そんなにメリハリの効いた毎日を送っているわけじゃないけれど、少し振り返ってみると、
時には心が踊るような日もあって、2009年もそれほど悪い年じゃなかったような気がしてきた。
というよりも、雨の日は雨を愉しむ、という心構えが身に沁みてきたということかもしれない。
なんにしても、あまりUP-TO-DATE な情報や、わざとらしいことに関わりたくないという気持ち
が年々強くなってきているし、なによりも、「こだわる」ということに対しての違和感みたいなもの
が大きくなっていて、うまく説明できないけど、たとえばラーメンが食べたかったら、わざわざ
旨いといわれる店に行って行列に並ぶより、目の前の店に入って、それがあまり旨くなくても、
それはそれでいいかなっていう感じ、「たかが」でも、「されど」でもなく。
人は日々刻々と、何かを「決め」ながら生きていかなければならない。
要は、その「決め方」への attitude なんだろうな。
時期につき2009年の10BESTをピックアップしてみた。
去年は、本買いの幕間で、こんなことをやっていたのだった。
■ concert : David Byrne / january
30年ぶりの再会。
そのときにも書いたが、ずっとやってるほうもエライけど、駆けつけるほうもなかなかだ。
その頃トンガリ放題だった David Byrne の肩の力の抜けかたがいい感じだった。
ノスタルジイではなく、ポジティブに年をとることの切なさのようなものが心に残った。
"Everything That Happens Will Happen Today" は、2009のベストCDかもしれない。
Brian Eno との化学反応がもっともいいのは、このニューヨーカーではないのか。
また30年後に会いたい。
■ exhibition : 歴史の歴史 at 金沢21世紀美術館 / february
金沢 + SANAA 建築 + 杉本博司 という組み合わせにシビれた。
巡回で春に開催された大阪の国立国際美術館の同展には行けなかったが、21世紀美術館
のクオリティやアーティストのテイストを考えると、金沢展にはきっと敵わない。
けっきょく旅らしい旅はこれだけだったけど、雪の金沢を堪能した。
金沢は食べものも旨かった。
■ shopping : Very First Antique Piece / february
骨董品を買うなんて、そのときまで夢にも思っていなかったことだけど、21世紀美術館で、
杉本博司の古美術への熱にあてられて、ふらっと入った新竪町の古道具屋で、掌にのる
小さな焼きものにつかまってしまった。
紫香楽の肩衝茶入れ、蹲(うずくまる)風である。
茶道具の中でも茶入れは見立てのきかないアイテムだから、なかなか奥の深い世界がある
ということが帰ってからわかったが、なによりもその小品の作者が、亡き父親の知己の作品
だったことに、奇遇以上の「縁」を感じた。
萩市の茶道具屋に頼んで寸法に合った桐箱を造り、今もご健在のその作家に箱書きをお願いし、
「仕覆」といわれる包み裂にくるんでその桐箱に納めれば、いっぱしの骨董である。
銘をつけてやりたい。
■ work : Making library of Kimko / april
「コトバノイエの30冊」の選者をしていただいた木村さんのご厚意で、ミーティングルームの
本棚をプランさせていただけたのは、間違いなく去年いちばん嬉しかったことのひとつだ。
この仕事が、コトバノイエのひとつの指針となった。
この本棚は着実に成長している。
■ movie : Gran Torino by Clint Eastwood / may
なんかしみじみといい映画だった。
たぶん彼のベスト・フィルムではないんだろうけれど、やはりキラリと光る。
いつからか、映画は映画館でしか観ないようになってしまった。
寛ぎながらTVのモニターで観る映画も悪くはないけれど、暗がりのなかで大きいスクリーン
を一心不乱に見つめる2時間は、ほかの何ものにもかえがたいひとときのように思える。
そして、イーストウッドがぼくたちに届けてくれるどの映画も、その期待を裏切らない。
イーストウッドは、映画のことをよくわかっている。
ハリーでもマニーでもなく、唾を吐き続ける頑固ジジイのウォルトが、そのまま79歳のイースト
ウッドに思えてしまうのは、綿密に計算された彼のテクニックだろう。
そしてその世界に惹きこまれると、その映画が、彼の他の作品と同じようにリアルタイムの
アメリカの姿を描いたものだったことに気づく。
good job.
■ pet : HAL the cat / july
ある夏の日、猫がウチにきた。
生まれてから1年足らずの、人間でいえば女子高生くらいの牝猫である。
一昨年に20年を共に過ごした愛猫を亡くし、しばらくは喪に服していたが、家の近くに、
ARK ( Animal Refuge Kansai ) というNPOのアニマル・シェルターがあることを知って、
また猫と暮らしてみる気になったのだった。
もうすっかり慣れて、猫らしく勝手気ままに過ごしているが、ペットというよりは、家族が
一人増えたという感じに近い。
この小さな生き物は、いろいろなことを教えてくれる。
■ website : コトバノイエの30冊 / january - september
ふとした思いつきで生まれた企画だけれど、思っていた以上にスリリングな体験だった。
一昨年の矢部さんに始まった選者が、ブルーナボインの辻さん → 木村工務店の木村さん
→ Meets regional の半井さん へと、熱をもって展開した。
次は若者や年配の方のお願いできればと思って人選を練っているが、なかなか難しい。
でもやっぱり、人とのセッションは面白い。
■ exhibition : 若冲ワンダーランド at MIHO museum / october
故郷の美術館で、若冲の掛け軸や屏風絵を見ることができたのが、忘れがたい。
本人がそれを自覚していたかどうかはわからないが、若冲の作品はどれも、絵師としての
魂に溢れていて、 この one and only の奇才に圧倒された。
同時期に東京国立博物館で開催されていた歴史的傑作「動植綵絵(30幅) 」を見ることが
できなかったのは残念だったが、新たに発見された水墨の「象と鯨図屏風(六曲一双)」と、
プライス・コレクションの極彩色モザイク画「鳥獣花木図屏風(六曲一双)」の両方を、至近
距離で見られたのはこの上ない僥倖。
これだけのコレクションを、一堂にみられることは、たぶんもうないだろう。
若冲の発見者である辻惟雄氏が、この MIHO museum の館長だったことを喜ぶべきだ。
「信楽 - 壷中の天/1999」・「白洲正子の世界/2000」・「小林秀雄 - 美を求める心/2003」
「青山二郎の眼/2006」・「与謝蕪村 - 翔けめぐる創意/2008」
この美術館からは、眼を離せない。
■ automobile : 2000 SAAB 9-3 2.0t SE / november
ひょんなことで、車の乗り換えを余儀なくさせられた。
ずっと乗っていこうと思っていた、10年2台にわたる SAAB CLASSIC 900 から、それほど
期待もしていなかったモダンサーブ 9-3 への乗り換えだったが、これが思わぬ拾いモノ。
2000モデル SAAB 9-3 2.0t SE は、ひとことで言うと、well-designed-car である。
車本来の機能である「走る・曲がる・止まる」に関しては言うまでもなく、プレーンで、しかも
しっかりとした個性のあるスタイリング、スイッチやレバーのレイアウトやインターフェイス、
そしてたとえば方向指示器や警告の音や、メーターパネルやエンブレムのフォントまでもが、
一つのコンセプトのもとに、見事に設計されていて、北欧デザインの大人ぶりを感じさせる。
この「優しさ」は他の国の車にはない
成熟が、シンプルに行き着くのは、健全な生活がそこに存在するからなんだろう。
やはり北欧おそるべし、これが大人のデザインだなあ、と感心するばかり。
去年いちばんの買いものだった。
■ event : one coin / one note / december
現在も営業中、今も店番をしながら帳場でこれを書いている。
このプロジェクトで良かったなあと思うことは、one coin / one note というキーワードを
発見できたことだ。
古書店のカンバンを挙げて3年目になるが、by appointment なんていう気ままなスタイルを
とりながらのんびりとやってきたから、売り方ということについてあまりきちんと考えたこと
がなかったわけだけれど、このショップのオファーをいただいて、このアイデアが浮かんだ。
ひょっとしたら、これがパーマネントなスタイルになり得るかもしれない、と今は思っていて、
すでに次のプランが萌芽している。
いずれにしても、不特定多数の人たちに立ち寄ってもらい、本と引き換えに金銭の受け渡し
をするという、リアルなショップを体験するのは全く始めてのことで、この前のエントリーでも
記したが、このリアルな感触を感じさせてもらえただけでも、このプロジェクトを企画された
近藤さんには感謝したい。
繰り返して記しておく。
倉俣史朗さんが言っていたように、ショップ・スペースとは祝祭の空間なのだ。
だからこそ、新しいことがそこから発信され、リニューアルや改築が繰り返される。
BOOKS+コトバノイエも、祝祭的な、どこにもないブックストアでありたい。
*
2009年の本。
< 10 best books of 2009 >
□ 表徴の帝国 L'Empire des Signes ロラン・バルト 新潮社 1974
□ 私の食物誌 吉田健一 中央公論社 1972
□ 文体練習 Exercices de Style レーモン・クノー 朝日出版社 1996
□ ジャズ的 平岡正明 毎日新聞社 1997
□ レヴィ=ストロースの庭 港千尋 NTT出版 2008
□ 初稿 眼球譚 Histoire de l'œil ジョルジュ・バタイユ/オーシュ卿 奢霸都館 1997
□ 家守綺譚 梨木香歩 新潮社 2004
□ 夢の博物館 澁澤龍彦追悼アンソロジー 美術出版社 1988
□ 旅する哲学 The Art of Travel アラン・ド・ボトン 集英社 2004
□ 日沒閉門 内田百閒 新潮社 1971
< 惜しくも選外 >
□ 奇想の系譜 辻惟雄 美術出版社 1970
□ 九つの小さな物語 富岡多恵子 大和書房 1975
□ マルセル・デュシャン 東野芳明 美術出版社 1977
□ 象の消滅 短編選集1980-1991 村上春樹 新潮社 2005
□ 愛書狂 フローベール他/生田耕作編訳 白水社 1980
□ 錯乱のニューヨーク Delirious New York レム・コールハース 筑摩書房 1995
□ 良心の領界 The Territory of Conscience スーザン・ソンタグ NTT出版 2006
< 10 best visual books of 2009 >
□ Mapplethorpe : The Complete Flowers Robert Mapplethorpe teNeues Publishing Group 2006
□ 拡大の美 日本が愛した焼きもの 西川茂 講談社 2007
□ THE BOB DYLAN SCRAPBOOK : 1956-1966 BOB DYLAN SIMON & SCHUSTER 2005
□ SUGIMOTO - ARCHITECTURE 杉本博司 Museum of Contemporary Art Chicago 2003
□ Paper Pools David Hockney Thames Hudson1980
□ ROLLING STONE/THE COMPLETE COVERS 1867-1997 Jann.S.Wenner ABRAMS 1998
□ ルーシー・リィー復刻 三宅一生監修 求龍堂 2009
□ Personal Exposures Elliot Erwitt W,W,Norton & Co, 1988
□ Henri Cartier-Bresson 梶川芳友編 何必館・京都現代美術館 1997
□ Edward Hopper Rolf G. Renner TASCHEN 2000
「たたずまい」のよくない本を、年々受けつけられなくなっている。
本は、読める object でもある。
*
ちなみに、去年買った本は902冊、売った本が591冊で、けっきょく本棚に311冊増殖したことになる。
本買いのルーティンに飽きてきたので、なにか新しいルートを見つけたい。
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
洋服屋さんが、洋服のデザインやクオリティで勝負するように、
本屋も、本そのものの力で勝負するしかない。
というのが、あらためて感じたこと。
だから、もっとバンバン買わなきゃ、と思います。
買うことで、 new horizon がきっと見えてくる。
twenty-ten というのは、なんとなく、ゴロがいいですよね。
2010冊買いたい。
BOOKS+コトバノイエ
店主敬白
*
中津の one coin / one note は、1月6日からオープンしています。
営業期間もあと1ヶ月となりましたので、ぜひお越しください。
最近追加した「デザインの発見」のブックリスト。
