a day in lifeの最近のブログ記事

poolline.JPG


水に浸るのが、とにかく好きだ。

朝晩欠かさずの入浴。
矢部さんに拵えてもらったコトバノイエの風呂は最高に気持ちいい。
あっちもこっちも扉が開く。
ステンレスの器。
針葉樹の床。

英語でレッドシダーと呼ばれる種は4種あるが、分類学的には関係は薄い。
また、シダーとは厳密にはヒマラヤスギ属のことだが、レッドシダーは
いずれもヒマラヤスギ属ではない。(Red Cedar quated from Wikipedia)


海水浴。
つま先で跳ねるように砂浜を走り、ザブンと飛び込むしょっぱい水。
あがってからも、身体が波に揺られているようだというほどにはもう浸れないけれど。
少し遠くまでは泳いでゆける。
波を越えて

海に沈む夕陽。

鳥取駅前の鄙びた銭湯の湯船には、こんこんとお湯が溢れていて、ちょっと熱い。
銭湯のお湯は、どこでもいつもちょっと熱い。

駐車場はただ、入るのは200円のホームプール。
少し泳いだあとタオルを敷いて眼をつぶれば、子供たちの歓声が遠くに響く。
揺れる水面。

初プール!! プール→カキ氷→本屋→本屋→白島食堂。
極楽でございます、紅海に行かずとも。
tweet / 8:50 PM Jul 20th Twitter for iPhoneから。


雑草に埋もれてた水のないプール。
田圃のなかにある隠れ家のようなプールは、1年ぶりに行ったら閉鎖されていた。
ちょっとした楽園みたいな外プールだったんだけど。
人のいない廃虚に佇む。

またある日訪れた、信じられないほどの人のひしめく都会のプール。
ローラーコースターの残骸を眺めながら、葬送の行進のようにただ歩くだけの水たまり。
しかも気のきいたことに、大きな風呂までついてやがる。
spa world という名前が冗談としか思えない。
ビルディング。
新世界。

ゴルフコースを眺めながら寛ぐ山の中の小さなプール。

この高原のプールは、とにかく気持ちがいい。
それほど広いプールではないのだが、半外のデッキスペースがあり、澄みきった空の下で、
ゴルフ場の芝生や遠くに建ちならぶ山小屋風のコテージ、そして遙かに霞む山々なんかを
眺めながら、泳いだり、デッキチェアに寝ころんだり、ジャグジーに入ったりするのは、
岡林信康じゃないけれど、「申し訳ないが気分がいい」。
blog / 2009年5月 8日 12:49。

20mの潜水。

故郷を訪ねてくれた知己を連れ行く露天風呂。
リゾートの快楽。
森の夕暮れ。

そして、川遊び。
故郷の渓流の、冴えた水に身を浸す。
その冷たさと懐かしさ。
伝える。

帰路、ナビゲーションに導かれるままに辿り着いた京都のプール。
50mの競技プールで泳ぐ気持ち良さ。
体力がなくなったことはすでに幻滅ではなく。
as it is.
jacuzzi のぬくもり。

山のプール→露天風呂→川遊び→50m競技プール、とにかく水に浸り続けた3日間。
そんなかんたんに仕事モードには戻れない、身も心も。
tweet / 8:15 PM Aug 18th webから。


そうして最後はやはり家に戻る。
うたた寝のあと、目覚ましで浴びるシャワー。
年にたった3回くらいしか使わない外のシャワーだけど、その開放感は、唯一無二。
空の下で素裸になれるのはここだけだ。

外壁からとびでたシャワーの栓を捻り、冷たい水を冠ったら、本を買いにいく。

もうすぐ夏が終わる。

*

真夏の本買。
心なしか、本も少し草臥れている。

際立ったものはそれほどないが、珍しいものがいくつかある。

□ 日本について   吉田健一   講談社  19570825 第1刷  ¥2,000
□ 時間   吉田健一   新潮社  19760415 初版  ¥1,000

去年読んだ「私の食物誌」からだから、実際にはそれほど古くから読み込んでいるわけではないが、
ずっとなんとなく気にかかる書き手のひとり。

本職の評論はなかなか読めないが、饒舌体とでもいえそうなエッセイの独特の文体と比喩は、滋味深い。

「日本について」は、松田正平の手になるブックデザインがまず素晴らしい。

その作風と同じような軽妙で素朴な描き文字に、同じ手描きの飾り窓。
函と同じデザインが、エンボスだけで表現されている本そのものもお洒落だ。

あとがきの一節を引用する、少し長くなる(短い引用を許さない文体なんだ)。

自分の国を直接に取り上げて書くといふのは、見方によっては無駄なことであって、我々の国は
我々の行動にあり、それに就いて書くのは外国人に任して置いていいのだといえる。併し宣伝でも、
感傷でもなくて自分の国のことを書く場合もあるのはあるので、我々日本人は明治維新から今日
まで日本に就いて絶えず考えることを強いられて来た。維新以後の日本が、我々の手で、積極的に
作られた面があるからである。そして考えたことは、書く材料にもなる。。


「時間」のほうは、もう少し抽象的

その最後の一文。

併し世界を見廻してそこに間違いなくあると認められるものはそこにあり、それがあったのでは
ないのはその感覚を生じさせるものがないからであって我々が物を見るときの眼を世界に向ければ
そうなる。そこにあるものはあって我々に語り掛けるがかういうことが曾てあったと語るものは
なくてそこにも流れる時間といふのは常に現在である。

これが吉田健一。 

□ FLUX : Asymptote  H.Rashid +L.A.Couture  PHAIDON 2002 first  ¥3,000

ラディカル・カップルズ。

妹島和世と西沢立衛をはじめとして、男女ユニットで設計活動を行うの建築家が増えているけれど、
この「Asymptote(語意は『漸近線』だが、べクタ・グラフィックスのためのコンピュータ言語の名称
でもある)」もそういうユニットのひとつで、この「FLUX」は、ヴァーチャルなものを含んだ彼らの作品集。

そのほとんどが、「MAYA」と呼ばれる、ディズニーのアニメなどにも使われているソフトウェアで制作
されているようで、この本にあるオーガニックなデジタル・デザインは、いかにもそれらしいものだ。

ニューヨーク株式取引所のヴァーチャル・リアリティ・トレーディングフロア、Knoll社の家具システム、
ヴェニス・ビエンナーレのパビリオン、Dodgerのスタジアム、ドイツのMercedes-BenzMuseumなど。

好みは別として、こういうものがどんどん実作になっているそのダイナミズムは、素晴らしい。
たとえば東京証券取引所に、実績のない若者のアヴァンギャルドなインテリア案が採用されるなんて、
たとえどれだけ景気が良くてもちょっと考えられないからね。

20世紀ではない、少なくとも。

他にもこんな本たちが、この夏コトバノイエの本棚に収まった。 

□ 犬狼都市 キュノポリス    澁澤龍彦    桃源社  19620410 初版   ¥4,000

□ おぼえていないときもある    W.S.バロウズ    ペヨトル工房   19970910 第2刷   ¥1,800

□ 詩人 金子光晴自伝    金子光晴    平凡社   19731205 第2版第1刷   ¥1,000

□ 絵本 桜の森の満開の下    坂口安吾/福田庄助    審美社  1 9900920 初版   ¥3,000

□ Philip Johnson/John Burgee Architecture 1979-1985     RIZZOLI INT'L  1985   ¥2,100

□ 詩めくり    谷川俊太郎    マドラ出版   19841210 第1刷   ¥600

□ 古都    川端康成    新潮社   19681030 15刷   ¥700

□ 詩人たち    粟津則雄    思潮社   19690801 初版   ¥2,000

□ うらなり    小林信彦    文藝春秋    20060815 第3刷   ¥300

□ ノンセンス大全    高橋康也    晶文社   19780630 4刷   ¥2,400

□ 能 神と乞食の芸術    戸井田道三    せりか書房   19850325 第5刷   ¥1,200

□ 図説 日本民俗学全集 3 ことば・ことわざ編    藤沢衛彦    あかね書房  19600531初版  ¥1,500

 

*

Twitter 発信中

最近追加した「建築と戯れる。」のブックリスト。

http://kotobanoie.com/


 

pond.JPG


調べることがあって、古い本棚からある本を取り出したら、レシートが挟まっていた。

CODY'S BOOKS   
$5.06     
-2 Aug. 76

本にはいろんなものが挟まっている。
栞やレシートはもちろん、映画やコンサートチケットの半券、紙ナプキン、箸袋、手帳の切れ端
切手、絵葉書、そしてときにはラブレターなんていうのも。
でもこのレシートは、はっきりと憶えがある。 

CODY'S BOOKS は、U.C.バークレーの正門から真っすぐのびる Telegraph Ave. にあった
感じのいい本屋で、バークレイを訪れる機会があるときには必ず行ったところだけれど、変色
したレシートの CODY'S という文字を見たら、デジャヴのように、カリフォルニアの抜けきった
青い空と、あの学生街のHIPな雰囲気が映像になって頭の中を駆け巡った。

たしかpeople's park なんていう気持ちのいい公園も近くにあったはずだ。

今から34年前のある夏の日、21才のぼくはバークレーにいて、出版されたばかりで平積みに
されていたイッピーの本を、テレグラフ通りのそのラジカルな本屋で買ったのだ。

今とちっとも変わっていない。

どこにいっても映画館とレコード屋と、本屋。

□ TO AMERICA WITH LOVE     Anita & Abbie Hoffman    1976     Stonehill

官憲に嵌められて地下に逃亡したヒッピーとその妻との往復書簡。
17ページまでびっしりと書き込みがあるから、だぶんそこまでがんばって読んだんだろう。

少し調べてみると、この本は「Steal this movie!」というタイトルで(彼の本に「Steal this book!
 - この本を盗め」というのがあるのだ)2000年に映画化されていて、それが google video で
フルサイズ(107分)配信されていた。

水土書店の店番をしながら、MacBookで最後まで観てしまったが、アビー・ホフマンという人や
イッピーというムーブメントの一部始終は、この映画で描きつくされているようだ。

象徴的な曲がある。
シカゴセブンとして、ホフマンが一気に表舞台にでた、1968年のシカゴでの民主党全国大会の
騒動をうたった曲で、映画のエンドロールでも流れていた。

CHICAGO   by  Crosby, Stills, Nash and young

Though your brother's bound and gagged and they've chained him to a chair
Won't you please come to Chicago just to sing
In a land that's known as freedom how can such a thing be fair
Won't you plaese come to Chicago for the help we can bring
We can change the world - re-arrange the world
It's dying - to get better

Politicians sit yourself down, there's nothing for you here
Won't you please come to Chicago for a ride
Don't ask Jack to help you cause he'll turn the other ear
Won't you please come to Chicago or else join the other side
We can change the world - re-arrange the world
It's dying - if you believe in justice
It's dying - and if you believe in freedom
It's dying - let a man live it's own life
It's dying - rules and regulations, who needs them

Open up the door

 

映画のある場面で、彼は自分のことを hippie organizer あるいは long haired revolutionary
freak なんだと言っていて、まさにそれは言い得て妙な表現だけれど、この " flower people "
たちが希求したさまざまの「自由」や「制度」のほとんどは、今日では革命的でもなんでもなく、
ごく当たり前のものとして受け入れられている。逆にいえば、かれらのこの莫迦げた騒乱が
なければ、人種やジェンダーや性的嗜好による偏見のない自由な選挙や、ひょっとしたらこの
インターネットだって、何年も遅れていたのかもしれないとさえ思う。

Whole Earth Catalog は、彼らのライフスタイルなんだ。

このイッピー・ムーヴメントは、音楽やドラッグという、いわゆるカウンター・カルチャーだけでなく、
政治というちょっと痛いところに足を踏み入れてしまったために、「自由」を畏れ、戦争を正当化
するエスタブリッシュメントによって無惨に崩壊させられ、このホフマンを始めとする(彼は1989年
に自死している)多くの人たちが傷つくことになったのだ。

誤解を恐れずに言えば、けっきょくのところ彼(ら)は純粋な愛国者にすぎなくて、そのラジカル
な行動は、純粋に自分たちの国の未来を憂うが故の、実直なものだったんだろうと思う。

ホフマンが自分の息子を、「america (小文字の "a " だと彼は強調しているのがおかしい、
たとえば同じ頃に発行されたディランの詩集 "tarantula " なんかも全部小文字で書かれて
たりするから、その頃大文字(capital)を使わないスタイルが HIP だったものと思われる)」と
名づけたのは、きっとそういうことだ。

親の心子知らずで、america Hoffman は、その名を嫌い Allan と名のっていたらしいが、
この映画ができた2000年には america に戻したそうで、映画のエンドロールでは協力者
としてちゃんと AMERICA HOFFMAN とクレジットされている。

願えば、やはり通じるのだ。

ほんとうは、水土書店の本棚を眺めながら、本屋の仕事って「編集」そのものだと感じたこととか、
アーティストのように、本棚で表現できるようにになればいいなあなんて思ったことについて書こうと
考えていたんだけれど、なりゆきで見始めたアビー・ホフマンの映画につい引き込まれ、グズグズ
になってしまった。

やっぱり映像は力があるなあ。


水土書店にて、徒然なるままに。


*

店番の合間を縫って、本買いは続く。
いつも瑞々しい素材がないと、ショップは面白くないからね。

□ 森繁さんの長い影   小林信彦   文藝春秋  20100515 第1刷

毎年春になると、遠くに住んでいる伯父さんからの手紙のように、小林信彦の本が届く。

いつものように一気に読み終えた。

小林さんが週刊文春に連載しているクロニクル「本音を申せば」の単行本もこれで12冊目。
あいかわらずタイトルはいけてないが、この連載を続けてくれていて、それが年に一回本になる
だけで、充分。もっといえば、自分の母親とほぼ同じ年の人だから、自分の母親と同じように、
生きていてくれるだけでいい。

晩年をむかえて多少の衰えはあるのかもしれないが、福田沙紀や貫地谷しほりを目ざとく贔屓
にするところなんかは、元祖アイドルオタクの面目躍如、そして同年代の映画人イーストウッドに
対する眼はひたすら優しい。

たぶんとても涙もろくなっていらっしゃる。

残された時間をできるだけ小説に集中したいということだけど、実はこういうコラムこそがこの人
の本領なんだから、この連載だけは律儀に続けていてほしい。


□ デニス・ホッパー  エレナ・ロドリゲス 白夜書房 19890520 初版第1刷

追悼の一冊。

貫禄の大不良が逝った。

ジャック・ニコルソンがでてくる「イージー・ライダー」のマリファナのシーンで本物を使ったのは
有名な話だし、ひょっとしたらコカインも本物だったかもしれない。役者になりたての頃に「理由
なき反抗」と「ジャイアンツ」で、ジェイムス・ディーンと共演していたというのも伝説のひとつだし、
「Abstract Reality」という写真集もシブかった。

それにしても、人の一生で、「イージー・ライダー」のような作品(監督・脚本・主演)を造ることが
できたら、それだけでもう充分だと思うのは、僕だけじゃないだろう。

カムバックした「ブルー・ベルベット」のフランク・ブースも強烈だった。

異才の死を惜しむ、HIPなオヤジだった。

Dennis Lee Hopper  ( 1936/05/17 - 2010/05/29 )

合掌

 
□ ロカ   中島らも   実業之日本社   20050425 初版第1刷

急逝のため中断された絶筆。

アマゾンのレヴューでは、ガキたちが垂れ流しだ寝言だとほざいているけれど、ジジイになる
ことの恐怖や楽しみは50過ぎたヤツじゃないとわからない。

近未来私小説と銘打って、爺ロッカーを描く中島らもの気持ちがなんとなくわかる。
彼は死ぬまでロッカーでありたいと思っていたんだろうし、たぶんそうだった。

酔っ払って階段から落ちて死ぬのは ROCK だよ。

この物語の主人公小歩危ルカが、ククに会いに行こうと出かけたその瞬間でプツリと終わる
この未完のストーリーは、そのまま中島らもの消滅とシンクロするようだ。

中島らも ( 1952/04/03 - 2004/07/26 )

彼が亡くなってから、もう6年になる、彼もバロウズの信奉者だった。


□ ぼくたちの大好きなおじさん   アンソロジー   晶文社   20080808 初版

追悼をもう一冊、といってもこれは生誕100周年記念の本、没後でいうと31年になる。

晶文社の本だから、とうぜんながらヴァラエティ・ブックの体裁。
ぼくたちの大好きなおじさん、というタイトルはあまりゾッとしないが、植草さんの少し甲高い、
そしてあの文体とまったく同じ口調の話し声が録音された付録のCDと、5段30Pにわたる
北山耕平によるロング・インタヴューは価値がある。

けっしてシーンの中心にいたわけではないし、サブであるからこそ輝いた人だけれど、70年代を
象徴する人を選べといわれたら、やはりこの人は外せない。

植草甚一 ( 1908/08/08 - 1979/12/02)

本質的にはJAZZではなく、シュルレアリストだったんじゃないかと思う。

*

■ 森鴎外と美術  「森鴎外と美術」展図録    2006

□ ル・コルビュジエと日本   高階秀爾  鹿島出版会 19990330 初版

■ Japanese Design   Matthias Dietz   TASCHEN  1994

□ 曼荼羅の世界   濱田隆   美術出版社   19780710 初版

■ 青の時代    安西水丸   青林堂   19870410 初版

□ コミマサ・ロードショー   田中小実昌   晶文社  19800725 初版

■ クレーの天使   谷川俊太郎   講談社   20020426 第6刷

□ 日本美術全史 1−6   美術出版社   1972

□ 1339勝の孤独   三好徹   集英社   19790225 初版

□ 回転木馬はとまらない   富岡多恵子   読売新聞社   19720930 第1刷

■ 暮らしと器   山口泰子   六曜社   20050409 初版 

■ 宮沢賢治花の図誌   松田司郎   平凡社   19910529 初版第1刷

■ SUN-AD at work宣伝会議編宣伝会議20021001初版2,400

( ■ の本は、水土書店で展示中です。)

*

SPOT LIGHT 企画「 his master's choice - BOOKS+コトバノイエ 旅の本 30冊 」公開中。

http://kotobanoie.com/



rockface .JPG

"spot light " のテーマを「旅」と決めて、本棚から「旅の本」をピックアップしていたら、
ほんとに旅に行きたくなってきた。

そう思ったとたん、なぜか京都がうかんだ。

少し前の、ある古書店とのメールや本のやりとりが心に残っていたのかもしれないが、
たぶんそんなことではなく、流れてきた水が少しずつたまって、やがて溢れだすように、
まあとにかく行きたくなってしまったのだ。

本屋と美術館、久しぶりにイノダのコーヒーも飲みたい。

学生時代を過ごした街だけれど、大阪圏で暮らしていると、京都は近くて遠い。
魅力的な場所がいくつもあって、ことあるごとに行ってみたいなあと思うが、距離感が
いかにも微妙で、いざとなるとなかなか足が向きにくいところなのだ。

でもそれを「旅」と考えれば、すこし面白くなってくる。
旅といっても、ただ泊まろうと決めただけで、実際やったことはホテルに予約をいれた
だけのことだが、それだけでもちょっと非日常な感じになるから不思議なものだ。

このところ季節外れの雪が降ったり、変な天気が続いていたけど、陽気も少し春めいた
兆しもあったから、あわよくば、どこかで桜が見られるかもしれないと思ったりもしていた。


京都南インターを降りて市内へ向かうと、東寺あたりから街の気配が変わる。
縦にまっすぐのびる大きな路、それを横切る小さな通り、そしてその街並みに点在する
寺社や旧い町屋。

京都の街を走るのは思いだせないくらい久しぶりで、なんかとても新鮮。
やっぱり旅は移動の距離じゃないんだと、あらためて実感する。


□ 高麗美術館

紫野にある住宅街の中のプライベート美術館だが、李朝の白磁壺が、ガラスを隔てずに
見られるということを聞いていて、ずっと行ってみたいと思っていた。

朝鮮の磁器は、精巧な象嵌の入った高麗青磁も素晴らしいが、無名の陶工が雑器として
拵えた白磁の大壺は、造形も大らかで、なんともいえない「ふくよかさ」を感じさせる。

間近で見るその素朴な「白」には、他のどの陶器にもない無垢な精神性があった。

利休は、李朝朝鮮の古い飯茶碗(一説には日本からオーダーされたともいわれている)を、
「井戸茶碗」と名づけ茶道具に見立てたが、白磁の壺も、季節の花木を生けて床の間に
置けば、きっと美しい景色が現れてくれるんじゃないかと思う。

ひとつほしい。


紫野から、円町。


□ 山崎麺二郎 

コトバノイエの名刺や、one coin / one note のロゴをデザインしてくれた山崎くんの弟が、
円町でラーメン屋を始めたときいて、行ってみることにした。マニアに評判の店らしい。

メニューは、つけめん・塩ラーメン・しょうゆラーメンの3品のみ。

麺打ちの職人だというその店主の所作は、まるで禅僧のようで、お兄さんにも共通する
ストイックな雰囲気が店全体に充満していて、なんかいい感じ。

とにかくこんな静かなラーメン屋に入ったことない。

麺最高。


円町から寺町経由一乗寺。


□ 三月書房

今回の古本ツアーは、一乗寺 - 百万遍あたりと狙いは絞っていたが、京都といえば、
まず何をさておいても外せない三月書房。

学生時代に通いつめた本屋で、今はもう代が変わっているが、いつ行っても同じ佇まい。
ホントに小さな本屋さんだが、そのセレクションにはいつも感心させられる。

京都では、やはりここがいちばんだ。

□ 恵文社一乗寺店 

ギャラリーや雑貨の売り場を併設したセレクトショップとして超有名な本屋だが、
じつはこの日が初体験。

もちろん魅力的な本はいっぱいあったし、買う気も満々だったけれど、手が伸びない。
いつのまにか新品の本を買えない古本体質になっていることに愕然。

本屋見学ではちっとも面白くない。

□ 萩書房

恵文社の近くの古書店。
いかにも古本屋と行った佇まいのところで、トニー谷の書票がイカしてる。
雑然とした雰囲気にちょっとその気になったが、無理買い気味の2冊のみ。

セドリするには、ちょっと高い。

□ ガケ書房

2004年創業の新しい本屋。
スタイルは先達の恵文社と似たような感じだが。もう少しターゲット年齢が低いようだ。
雑貨を売るのはかまわないが、きちんとセレクトされているような気がしない。

いかにも今風だが、なんとなく一本調子なのが、少し退屈。


ここでも本が買えず、ややストレスがたまってきた。


気分転換に、京大北門前の進々堂でいっぷく。
定番のコーヒーショップだが、高い天井と大テーブルに、とりあえず和む。

This is Kyoto.


百万遍から銀閣寺

□ 善行堂

同世代の人が、去年最近始めた新しい古本屋。

まず、仕事を辞めて古本の実店舗をオープンしたという、そのハートにとにかく敬服。
ツアーでもっとも行きたかったのは、じつはこの本屋さんだった。

小さい店舗だがセレクションは悪くない。
やっぱり本屋の雰囲気は、店主の人柄がそのまま現れるし、そうじゃなきゃ面白くない。
善行堂は、山本さんそのものだ。

山本さんと少し話し、握手をかわした。


5軒の本屋を廻って買えたのがこの10冊。
本は悪くないが、10冊は少なすぎる。ホントはこの5倍くらい買いたかったんだけど。

■ 文房具を買いに   片岡義男   東京書籍   20030813/第1刷
■ さらば気まぐれ美術館   洲之内徹   新潮社   19880925/3刷
■ そして天使は歌う   久保田二郎   冬樹社   19810820/初版第1刷
■ 自分の謎 大人の絵本2   赤瀬川原平   毎日新聞社   20051125/初版
■ 青山二郎の素顔   森孝一編   里文出版   20061120/新装版
■ 日本のよさ   吉田健一   ゆまにて出版   19771010/初版
■ アメン父   田中小実昌   河出書房新社   19890420/再版
■ 厭芸術反古草紙   富岡多恵子   思潮社   19700715/初版
■ 麻薬書簡 現代の芸術双書19   W.バロウズ/A.ギンズバーグ   思潮社  19690701/第2刷
■ 就職しないで生きるには   レイモンド・マンゴー   晶文社   19860320/11刷

□ After Hours

清水寺のライトアップ夜桜
銀閣寺の「おめん
堺町錦小路の錦湯

□ Next Day

三条堺町イノダコーヒー本店の「京の朝食」

嵯峨野の落柿舎祇王寺常寂光寺、そして寂庵の瀬戸内寂聴

雨が降って、大山崎山荘には行けなかった。


「無数の小さな偶然の集積の上に立って、人々は『今』の空気を吸っている( by David Zoppetti )」


旅は、その偶然に会うための behavior だ。


*


最近追加した「これがHIPだ」のブックリスト。

http://www.kotobanoie.com/