books: 2007年12月アーカイブ
ちょっと大きな新刊書店に行くと信じられないくらいたくさんの雑誌が並んでいるけれど、日本の雑誌で
インターナショナルなレベルのものって今どれくらいあるんだろう。
「NIPPON」という戦前の雑誌のことを書いた本を買った。
名取洋之助と日本工房 [1931-45] 白山真理・堀宣男編 岩波書店 20060210初版
この「NIPPON」は、1934年10月から1944年9月まで、合わせて36冊発行された季刊誌で、日本の文化、
そして日本という国の姿を、写真やイラストレーションで欧米に伝えるためのグラフィック・メディアだった。
時代から考えると、ちょうど15年戦争の真っ只中だから、対外文化宣伝(プロパガンダ)の役割を持った
国策雑誌という性格をもっていて、もちろんすべて欧文(英・仏・独・西)での記載である。
雑誌のバックナンバーは、古本の真骨頂といえるものだから、気に入った雑誌は新旧洋邦を問わず、
眼にふれるたびに買い揃えているけれど、さすがにこの「NIPPON」は見かけたことがない。
(もっとも現実にそれがあったとしても、復刻版の揃いでさえ30万円する雑誌だから、オリジナルなんて
とても手がだせるようなアイテムじゃないだろうけれど)
ただこの本に掲載されているこの雑誌の画像を見ていると、写真やレイアウトといったエディトリアル・
デザインだけじゃなく、タイポグラフィーやロゴマーク・レターヘッドなども(おそらくCI ワークのはしりじゃ
ないかな)、そうとうカッコイイ。
この「NIPPON」を造っていたのが、土門拳・木村伊兵衛・亀倉雄策などそうそうたるメンバーを擁した
「日本工房」という制作集団、そしてアート・ディレクターとしてこのデザインチームを率いていたのが、
当時家が一見買えるといわれたライカを携えてドイツから帰朝したばかりだった名取洋之助という
若き(なんと24歳!)モダニスト、彼のセンスは明らかにインターナショナル・レベルだったようだ。
この本を眺めていると、「日本工房は日本の写真・デザイン界の源流である」という編者のメッセージや、
「伝説のグラフィック制作集団」という表現もあながち大げさなものではないように思えてくる。
今この雑誌がブックファーストの棚に並んでいたら必ず買うだろうし、おそらく季節ごとの発売を心待ち
にしていたんじゃないだろうか。
次の号を待って買いたくなるような雑誌の出現を切に望む。
*
12番目のカード ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋 20060930 初版
ハリー・ライム・シリーズの第6弾
コーンウェルのスカーペッタ・シリーズもそうだけれど、こういった長編の連作を書き続けられるのは
ひたすら体力の賜物でしょう。
肉食狩猟民族の根幹力の太さを感じさせられます。
リンカーン・ライム物がつまらないわけがない。
忍法八犬伝 山田風太郎 東京文芸社 19731110 初版
忍法帖シリーズ終期の傑作。
角川文庫の忍法帖シリーズは読み狂ったけれど、オリジナルの単行本を手にしたのは初めてです。
とにかくひたすら面白い、一度読んでしまえばずるずると深みにはまること必至。
この人の「コレデオシマイ。」などのエッセイの味わい深さも格別です。
負ける建築 隈研吾 岩波書店 20040325 初版
「書ける」建築家、隈さんの面目躍如たる一冊。
私有と欲望に依存しない「負ける建築」というタイトルは秀逸、今の時代のデザインのありかたを
見事に予言しています。
けっこうきわどい設計や発言をしていてもバランスが崩れないのがこの人のシャープなところ。
この伝でいえば、アフォーダンスとやらも「負け」のひとつかもしれません。
古くさいぞ私は 坪内祐三 晶文社 20000320 3刷
小林信彦の「東京のロビンソン・クルーソー」や植草甚一の「ワンダー植草・甚一ランド」のような
バラエティ・ブックを晶文社から出版したかったというのが本人あとがきの弁。
こういうことをヌケヌケとやってしまうのが、このひとの面白いところでもあり、鼻につくところでも
あります。
スタイルのわりに言っていることが案外コンサバティブなのはこの世代の特徴か。
それでもなんとなく買ってしまうのが、ちょっと悲しい。
花とあきビン 金子光晴 青娥書房 19740915 3刷
詩集を買うのはいつも気分がいい。
それがちょっとHIPな明治生まれの詩人のものならなおさらで、このひとの放浪は年季が入っています。
この詩集は晩年のもので、たぶんマイナーな作品集なんじゃないかと思いますが、飄々としたリズムの
なかに「旨味」が滲みでているような気がします。
いい買い物をしたような。
*
年が押し詰まっても相変わらずの本買。
年の瀬らしきことをひとつ言うと、今年の仕入れ総数は550冊、内訳は単行本282、文庫120、雑誌148でした。
2008年は本格的な仕入れに挑戦したいと思っています。
Have a nice new year !
本買にも出会いがしらっていうことがある。
それまで何の関心もなかったことなのに、ふと本棚で眼にとまったその本に魅かれてしまう、
そんな風にして写真集を買ってしまった。
もちろん心のどこかの琴線に触れたからこそ今ここにその本はあるわけだけれど、その心のありか
が自分でもどうもよくわからない。
本を「買った」というよりは本に「買わされた」といったニュアンスである。
たぶんそれはその日その時のその本棚じゃなかったら、きっと全く縁がないままで終ったはずだし、
また、だからこそなんとなくそんな本がちょっと愛おしくなったりするのかもしれない。
そういうことって人と人とのあいだにもときどき起こる magic のひとつだけれど、出会わなければ
出会わないで、何もなかったかのように通り過ぎていくことでもある。
ふと、「君とは今通り過ぎていくもののことだ。」という Paul Williams の言葉を思い出してしまった。
Do you believe in magic ?
*
GHOSTS vintage aircraft of world war 2 Philip Makanna / Chuck Yeager 1987
第2次世界大戦中の戦闘機や爆撃機の写真集で、P-51ムスタング、グラマンF6Fヘルキャット、ドイツ
空軍のハインケルやメッサーシュミット、英国空軍のスピットファイア、そして帝国海軍の零戦など
珠玉の航空機の美しい姿が、やや大きめのフォーマット(313 x 268 mm )に記録されている。
なかでも、CATALINA と呼ばれる大型の飛行艇(flying boat )は圧倒的な存在感で、翼長30mを越え
るこの大型機が悠々と海の上を低空で飛ぶその姿は、機能美の極といってもいいくらい優雅だ。
20世紀中頃(mid-century)のデザインの実力と、兵器というものの合理性にあらためて感服。
*
11811 小説 坂口安吾 檀一雄 東洋出版 19691020初版
老ヒッピーを自称する無頼派が、HIPの巨人安吾を描いた小説のオリジナル版を買わないわけには
いきません。読み尽くした感のある坂口安吾ですが、同世代の友人の眼から見た姿、それもあえて
「小説」と銘うった作品ですから、夫人が書いた「クラクラ日記」とはまた違ったリアリティで、
この孤高の作家の姿が描かれているにちがいありません。
これは個人的理由でとりあえず not for sale 。
11806 DESIGN PARIS le guide 2004 intramuros
フランスのデザイン誌「intramuros」のおそらく別冊。
パリのデザインコンシャスなショップ・ブティック・ギャラリー・レストラン・ブックストアから
選りすぐられた300軒が、各区ごとにうまく紹介されています。
それぞれ英語の表記が附されていますから、フランス語さっぱりの私たちにはかなり助かります。
3年前のガイドブックですが、これなら現地でも充分役立ちそう。
この intramuros という雑誌、古書店ではあまりみかけないのでけっこう珍しいものかもしれません。
11804 家日和 奥田英朗 集英社 20070410初版
この作家の持ち味はちょっとシニカルなユーモア感じゃないかと思いますが、この作品集も「家(house
ではなくhome)」にまつわるあれやこれやが達者に描かれています。
さっと読み流すには文句のない短編集。
この人の精神科医伊良部シリーズ(イン・ザ・プール/空中ブランコ/町長選挙)は秀逸です。
11616 シーズン・チケット ロジャー・エンジェル 東京書籍 19920831初版
この前のエントリーで「できれば揃えてみたいとひそかに思っています」といっていた東京書籍の
アメリカ・コラムニスト全集、それもこの前買った「球場へいこう」の前編。
まさに make a wish, and let it come. 言ってみるもんです。
文庫では
30683 ハンニバル・ライジング 上・下 トーマス・ハリス 新潮文庫 20070401初版
30685 憑神 浅田次郎 新潮文庫 20070605 3刷
30686 Q & A 恩田陸 幻冬舎文庫 20070410初版
この3冊、奥付きを見るとどれも今年発行、ISBN が978で始まっている古本を買うのは気持ちがいい。
それにしてもこの恩田陸という人も、なかなかの手練れですね。
