まず敬愛する小林信彦さんの新刊「日本橋バビロン」。
一昨年の「東京少年」、昨年の「うらなり」に続く長編で、こうやってこの人から年に一回届く滋味深い小説と、「人生は五十一から」シリーズのコラム集は、ちょっと偏屈な東京のおじさんからの便りのようで、しみじみとうれしくなってくる。
最初に発表された文學界の2007年4月号ですでに読んでいた作品だが、あらためて単行本という体裁になると、やはり存在感がまったく違う。 もちろん初出から加筆もされ、創作ノートというあとがきが附されていることも値打ちだが、なんといっても弟泰彦さんの装画が素晴らしい。
晩年になりますますこだわりが深まる昭和の東京(=望郷)への想いを、実名でありながら私小説にもクロニクルにもせず、さらりとした味わいの物語(narrative)に仕上げるセンスは、この人ならではのものだろう。
「私」とその生家を軸に、さりげなく行き交う親と子の大河。
そしてこの老舗和菓子屋の三代記は、時間が今に追いついたところで、衝撃的に終わる。
それはまるで「落ち」がついた、とでも呼びたいような渋いエンディングだ。
小林信彦は含羞の人である。
買ったのはamazon、定価が1,550円なのは、ひょっとしたら送料無料条件に合わせているからだろうか?
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あとの2冊は古書店で買ったものなので厳密にいうと新刊ではなく新古というべきかもしれない。
茶の本の100年 ワタリウム美術館監修
愛と哀しみのル・コルビュジェ 市川智子
前者は、岡倉天心の「茶の本」刊行100年を記念して2006年 9月に開催された展覧会・国際シンポジウムを基に編集・構成された目録本で、2007年8月1日発行。
コンテンポラリーアートの雄、ワタリウム/オンサンデーズの監修だけに、磯崎新、松岡正剛といった執筆陣やその構成もややハイブロウな雰囲気で、さすがに造本も美しいが、価格も3,400円と立派である。
原著「茶の本」は、もともと「The Book of Tea」として1906年にニューヨークで発刊されたもので、ある意味で日本の文化・芸術・デザインの真髄ともいえる「茶の湯」に興味がある人なら必読の一冊。
ひとことでいってしまうと茶の湯の宇宙を総合芸術(東洋)としてとらえ、それを欧米の人々(西洋)に紹介する
ために書かれた本、ということだと思うが、そこに貫かれているのは、「不完全なものへの美学」という日本独
特の美の概念で、このあまりに感覚的な美学がほんとうにあの合理の人たちに解るんだろうかという想いも
捨てきれない。
でもこの本には、「虚構のなかに、真実を宿らせること。これが〈建築を通して世界をまるごと好きになろうとした建築家の生き方〉を描くためにわたしが選択した方法である。」というこの若いイラストレーターの、コルブ先生にたいする「愛」のある視線があちらこちらにちりばめられていて、それがとても素直で好ましい。
どうしても男の世界になりがちな建築書のなかにあっては、異色の好著といってもいいでしょう。
丸い眼鏡をかけたちょっとヘナチョコ顔のコルブ先生が、なんだかとても素敵に見えてきた。
「愛と哀しみの」とはいかにも手垢のついた言葉だが、この本のタイトルとしては言い得て妙、であります。
それにしてもこの本、奥付を見ると2007年10月10日の発行ということになっている。
今週の読売新聞の書評欄にこの本の記事が載っていて面白そうな本だなあと思っていたんだけれど、早くも
古書店に並んでいた。 古本としてはやや高めの価格設定ではあるけれど、クオリティはほとんど新品と変わらない。でも再販制というものがなくなると、新刊がこういう価格で普通の本屋さんに並ぶっていうこともあるわけだから、こうなると新品と古書の違いは売られている「場」でしかないという風にも思えてくる。
新米の本屋としては、こういう本の安定した入手ルートを確保したいもんだと思う。
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□ 茶の本の100年 ワタリウム美術館 監修 小学館スクゥエア 20070801 初版 ¥2,700 ORDER
□ 茶の本 岡倉覚三 ソーントン不破直子訳 社会思想社 19951030 初版 ¥800 ORDER
□ 愛と哀しみのル・コルビュジェ 市川智子 彰国社 20071010 初版 ¥1,500 ORDER
□ 日本橋バビロン 小林信彦 文藝春秋 20070915 初版 ¥1,100 ORDER
小林信彦の本のストックリスト
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